ホセ近藤さんのこと

今日はボリビアで一番有名な寿司職人である、ホセ近藤さんを取材した。この結果は、ボリビア在住日系人向けの雑誌「月刊チチカカ」の正月号に掲載される予定だが、日本では入手が難しいと思われるので、ここで紹介しよう。

−−日本語お上手ですね。
上手も何も、俺日本人だから。二十五でこっちにくるまでは神田に住んでたんだよ。
−−あ、そうでしたか。お名前がホセさんなんでてっきり…。
いや、親父がラテン好きでね、ホセなんて名前つけやがって。おかげでガキのころはいじめられたりもしたよ。
−−本名だったんですね。二度びっくりです。さて、この辺でお寿司の話をお聞きしたいのですが、まず、ここラパスでお寿司屋さんをやろうと思ったきっかけは何ですか?
俺は17の頃から神田の店で修行をしてたんだけど、そろそろ店を持とうかって時に店主の親父さんが、南米の日系人の為に寿司を握ってみないかって言い出してね。
−−それで、すぐに決心したんですか?
いや、南米だかアフリカだか知らないけど、そんなどこにあるか解らない外国に行くなんて、勘弁してくださいって最初は断ったよ。だけどね、店主が何か良いこと言って、それでなんだか行こうかって気になったような気がするなあ。
−−そこ大事な所じゃないですか。いい話お願いしますよ。
そんな事言っても忘れちまったんだから仕方ねえよ。多分、なんかほろっと来ることをぐぐっと踏み込んでがつーんと言われたんだよ。
−−長島みたいですね。じゃあ、ここは適当にエピソード作っておきます。
さすが、餅は餅屋だねえ、泣ける話で頼むよ。
−−それでは、内陸国でお寿司さんを営業する苦労についてお聞かせください。米はこちらでも入手ができますけど、他は大変でしょう?
それが、申し訳ないんだけど全然苦労してないんだよね。
−−え?でも魚はどうやって入手するんですか?
うちは湖とか川の魚ばっかり使ってるから。あとは、冷凍の魚もどんどん入ってきてるからね。
−−淡水魚を生で食べても大丈夫なんですか?
その辺は、ほら、こっちの人って丈夫だから。
−−えーと……。ワサビはどうしてます?
ワサビぽい草はこっちでも生えてるんだよ。毎月山に行って取ってきてるね。
−−なるほど。かなりオリジナリティのあるお寿司のようですね。
まあね。ボリビア人は本当の寿司は解んないし、日系人には今日本の寿司はこんな感じだって言えば納得してくれるよ。あんたも食ってかないかい?
−−いや、遠慮しまておきます。今の話、雑誌に載せても良いですか?
構わねえよ。
−−こし餡とつぶ餡はどちらが好きですか?
こし餡だね。
−−ミーちゃん派?ケイちゃん派?
ケイちゃん派。でも、ピンクはカルメン77までだね。
−−フランス、オスマン帝国およびイギリスを中心とした同盟軍とサルデーニャが…
クリミア戦争
−−最近疲れやすいうえに、肩こりがひどくて困ってます。どうしたらいいですか?
亜鉛を含む食材を多く取り入れ、一日3回のストレッチをすると良いでしょう。
−−海は死にますか?
まず、海を定義してください、そして次に海の死を定義してください。そうすれば答えは自ずと明らかになる筈です。
−−今日はありがとうございました。
おうよ。またいつでも来てくんな。
【2006年12月「らばす寿司」本店にて:聞き手=ボリビア錫彦:撮影=カメラ斉藤(電池切れのため失敗):お遊戯=ターニャ(後ろでずっと踊ってた)】