ミステリーの時間

「それではお尋ねしますが、あなたは受け取ったチケットをどこにしまったのですか?」
「どこって、ハンバーグの中に決まってるじゃない」
「眼鏡に挟むでもなく、パンツに入れるでもなくハンバーグにしまったと」
「そうですよ、それが何か?あと、後半はセクハラですよ」
「それはおかしいですね、だったら木村はどうしてあんパンを丸めたんです?」
「え?あんパンの餡はこし餡…」
「だってそうじゃないですか。ヨードチンキはチケット売り場に最初からなかったんですよ。だったらあなたがハンバーグにチケットを押し込んでいる間、車掌は何をすれば良いんですか」
「いや、ええと、そうだ、たしかあのとき窓の外で羊のストリップショーが始まってた筈ですよ。車掌さんはあれを見ていたのでは?」
「それは、あり得ません。あと、ストリップショーじゃなくて毛刈り実演です」
「どうして?どうしてあり得ないって言えるの?」
「あなたがチケットを車掌に恵んでもらったとき、あの車掌は既に亡くなっていたんです」
「そ、そんな!」
「あなた、空中ブランコ乗りとしては超一流かもしれませんが、人を見る目は三流ですね」
「死んでいたなんて信じられない…。私を騙してるんじゃないですか?」
「いいえ、本当です。私が殺しましたから」
「そう、手段を選ばない人ね」
「何とでもどうぞ」
「負けを認めるわ。チケットの代金をごまかしたのは私です。逃げも隠れもしません」
「あなたは、最初の犯行時にそれを認めるべきでした。車掌には本当に気の毒な事を…」