ボリビアの父兄参観

隣家のエンリケが屋根から落ちて足を折った。気の毒に。幸い単純骨折で来月には退院できるらしいのだが、娘のターニャの父親参観日に出られないことを嘆いていた。ボリビアは父親参観が山間部でも川の左岸でも左官工の間でも盛んなのだ。ひどい話だが、父親参観に父親が来ない子はチチカカ湖に放り込まれるという陰湿ないじめが横行しているくらいだ。悲しみよこんにちはってなもんだ。
エンリケは俺に代わりにターニャの父親参観に出てくれと言い出した。ターニャが通っているピピ(日本で言う幼稚園のようなもの)は近所にあるので、俺が行っても父親じゃないってみんな解るだろうと最初は断ったのだが、エンリケはそれでも構わない、なんだったらスズヒコが本当の父親だったことにすればよいとか馬鹿な事を言い出した。仕方が無いので代役を務めることにした。後で知ったのだが、こちらでは父親参観に代役を立てることは珍しくない事のようだ。むしろ注目を集めるために、目立つ父親を代役に立てることが流行っているそうだ。俺はここら辺では珍しい東洋人なのでそういう意味では丁度良かったのかもしれない。
ピピの父親参観は日本と同じような雰囲気だった。子供達はクレヨンでカブトムシの絵を描いたり、カブトムシの歌を歌ったり、カブトムシという字を清書したりと楽しそうにお勉強していた。最後は父親と一緒にお遊戯の時間となった。先生がアコーディオンを弾きながら歌い、子供達はそれに合わせて踊り、父親達は手拍子や合いの手を入れるというのが、ボリビア流のお遊戯のようだ。お遊戯の歌はこんな感じだ。( )内は合いの手。

楽しいボリビア らららー(らららー)
ペルーのやつらは 皆殺しー (チチカカ湖を奪い取れ)
チリのやつらも 皆殺しー (海を返せ!)
首をもげ! (首をもげ!)
火あぶりだ (火あぶりだ!)
だけどやっぱりママが好き (そりゃそうだ)

2番3番もあるのだが、1番と同じく主に周辺の国をぶっつぶせとしか歌ってない。楽しい国だ。