「このザル」選考会議の舞台裏

年末は今年の総括として投票によるランキングを行うことが多い。今年も書籍、映画、インターネット等々、多くのランキングが発表されている。
中でも今年最も優れた笊を決める「このザルがすごい」は、例年ランキングを巡って熱い議論が繰り広げられる事で有名だ。「このザルがすごい」(以下「このザル」)の選考会は、毎年世界中の笊産業が盛んな地で開催される。今年はボリビアのスクレで開催されたのだが(余談だがスクレと笊産業は何の関連もない。開催地を決める際のミスと思われる)、先日縁あって選考会の模様を取材する機会に恵まれた。
日本のザルラーの方々の為に「このザル」には書かれて居なかった選考会の様子をちょっとだけお届けしよう。

A「じゃあ訊くけどさ、ザルって何なの?そもそも」
B「その議論は封印しようって去年決めたじゃない」
C「そんな、大事なことを封印しちゃって良いの?って意見も封印されたよね」
A「いや "ザルとは何か論争" が不毛だってのは解ってるよ。でも、これをザルと呼ぶんだったら、蒸し返したくもなるって」
D「水が切れない事がそんなに変かなあ?」
B「変だよ」
E「変だ」
A「実際に投票してくれた人たちのコメントを見ても『これはザルじゃないけど、今年のザルは?と訊かれるとこれしか思い浮かばない』といった具合に、否定しながらも選んでる人が多いんだよね」
D「それこそがザルだと思うんだけど」
E「と言いますと?」
D「ザルという言葉から思い浮かぶものこそがザルなんだよ」
C「頭突きという言葉からみんながジダンを思い浮かべるから『ジダンは頭突きだ』と言って良いの?」
D「それは極論だよ。カテゴリが全く違う」
A「とにかく、この『まるでザル!』という製品はあくまでも『網目の絵を描いたボウル』であってザルでは無いって事で対象外にしませんか?」
B「俺はそれで良いよ。その通りなんだし」
C「うーん。それもまた集計がややこしくなるなあ」
D「私は反対。穴が一つもあいてなくたって傍目にはザルに見えるんだから。それに、この製品がなかったら今年の『びしょびしょサラダブーム』もなかったわけだし」
E「あのサラダ最悪だよ。水っぽいし」
C「個人的には『びしょびしょサラダブーム』を起こしたって点だけでもあのメーカーを永久追放して欲しいくらいに、あのサラダが嫌いなんだけど、多くの人が投票してるって事実とどう折り合いをつけるかって点が悩ましい」
A「『このザル』の選考委員には、多くの人が同時に過ちを犯していると断じる権利があると思う。そうでなければ機械的に得票数のみで決めれば良いんだ」

上記は今年の「このザル」最大の話題となった「まるでザル!」に関する議論の一部だ。最終的には、同製品はランク対象から外れ、話題賞が贈られるという玉虫色の結果となったことは皆さんご存知の通りである。