ヴァイオリン


ヴァイオリンという楽器は釘を使わずにニカワで接着されている。このニカワはそれほど強力な接着力がないのだが、そのことが逆に温度や湿度の変化に柔軟に対応できるようになっている。
また、弦はゴムでできているので、演奏の合間に小さな矢を放って嫌いな奴に刺したりすることができる。矢の先端に毒を塗れば暗殺も可能だが、誤って自分の指に刺してしまうという痛ましい事故が相次ぎ、最近では毒を使うような事は滅多にない。ヴァイオリンの演奏スタイルの都合上、矢は演奏者の左側に向かって放たれる。オーケストラにおいてヴァイオリン奏者の左側(客席から見ると右側)の人達が皮の鎧を身につけているのはその名残だ。
糸巻きの部分の芯には飴が使われている。これは、演奏中に糖分が足りなくなったときに備えての事だが、飴を取り除いてしまったら演奏不能になるため、現在は果糖の固まりを別途持ち歩くようにしている。ヴァイオリニストが変な袋を腰にぶら下げているのはそのせいだ。大抵は不格好で趣味の悪い柄の袋なので、もう少し服に合わせたものにすれば良いのにといつも思う。あと、果糖を持ち歩くようになっても、まだ糸巻きの芯には飴が使われているのは理解しがたい。
ヴァイオリンに使われている木は製造後100年以上経っても呼吸をしているし、水分の吸収と放出を繰り返している。乾燥地に持って行くときは、自然な水分調整ができないため時折ボディ部分を水に浸けて水分を思いっきり補給する必要がある。この際、5分以上浸けると今度は呼吸ができなくなってしまうので注意が必要だ。乾燥地に持って行く場合でなくても、水に浸してから一気に乾燥させたヴァイオリンは良い音が出るので、意図的に行う事もある。水以外にも酒やレモン水が良いとか、地中海の海水が一番だとかいろんな説があるらしい。
ヴァイオリンを作る工房では、弓職人が一番偉い。弓の出来具合を、弓で人を殴った悲鳴の大きさや高さでチェックするからだ。