好日

三週間ほど続いたヘビィな仕事が一段落したので、休みを取ることにした。とは言ってもどこかに出かける訳でもなく、チチカカ湖を眺めたり、コロラドジュースを飲んだり、撮り貯めていた連続ドラマ「クイズorコンドル」を見たりして家でごろごろと過ごす。
今朝は柄にもなく朝の散歩を楽しんだ。公園の茂みにはトコブシの花が咲き乱れている。ビーアグ(イカを干したもの、スルメに近い)を花の中にそっと入れてみると凄い勢いで食いつく。今年のミラン・テラ・ブリーレ(花祭り)が楽しみだ。
散歩の途中、久しぶりにターニャに会った。相変わらず元気だ。「おじさん、悪の枢軸って許せないよね!」また新しい言葉を覚えたらしい。俺は「そうだね」とだけ答えた。「見つけたらぶっ殺してね」どうやら正確な意味は知らないらしい。「見つけたらね」とだけ答え、その場を後にした。
久しぶりに本でも読もうと早朝書店に立ち寄った。時間は8時50分、閉店10分前だが、店主はシャッターを降ろしかけてた。露骨に嫌そうな顔をする店主を「5分で買うから」となだめて、最新の鳩小説とカストリ雑誌を数冊買った。「また、鳩かよ。たまには、教養書を読んだらどうだい」この国ではお客がイヤミを言われるのはごく普通の事なのだ。「教養書ってどうせママ・フレスチャ(地元の料理研究家、最近脱税疑惑が報じられた)の簡単レシピだろ」このくらい言い返さないと、なかなか相手にしてもらえないのだ。
家に帰ると今回の客からのお礼の電話が留守電に入っていた。どうやら満足していただけたようだ。庭で昼花火をしながらポワソン・ビールで祝杯を挙げることにした。いや、その前にチピール人形(*)を捨てないといけない。
(*) 大事な仕事の前に部屋の隅に置く小さな土人形。毎朝塩を振り、夜には塩を払う。仕事が成功したら乱暴に捨て、失敗したら土に埋める。