近所の風景

今日は久しぶりの休み。6日ぶりだろうか。愛犬を伴って散歩に出かけることにした。生憎の雨模様だ、梅雨はまだ明けない。カタツムリが紫陽花の葉を食べている。ドレッシングを持ってこれば良かった。近所の蔦屋に行って銀色のDVDを借りてきた。ピカピカと光る丸いディスクが美しい。ここが屋外であること、そして雨が降っていることを忘れ両手に一枚ずつディスクを持ち粋なステップを踏む。ついでにカタツムリを踏みそうになったが寸前で堪えた。やさしさをウェイトレスにもアピール。すると5分後「あちらのお客さまからです」暖かいコーヒーを持ってきてくれた。ありがたい、体が冷えてきたので暖かい飲み物が欲しいと思っていたところだ。ウェイトレスの指す方を見ると鏡があった。鏡の中で微笑むウェイトレス。惚れさせてしまったようだ。雨で薄まるコーヒーを飲みながら家路へと急ぐ。

愛犬は先に帰っていた。

郵便ポストを除くと日本から手紙が届いていた。なつかしい、アンナだ。ここボリビアの郵便事情は悪く、日本とのやりとりは電気メールを利用する事が多いのだが、アンナは電気が苦手なので不便を承知でもっぱら手紙で連絡をしている。便箋は二枚、一枚目にはただ一言「さしみい」と綴ってた。それは安奈だ、微妙に違うし。二枚目には近況が書かれていた。相変わらず妄想だらけの手紙だ。丸めて後ろに放り投げると犬がキャッチした。やっとグローブの使い方を覚えたらしい。また散歩に連れて行ってやろう。

深夜、ベルが鳴った。強盗かもしれないと警戒しつつドアを開ける。考えてみれば強盗ならベルを鳴らさないはずだ。ドアの外には美しい娘が立っていた。雨の中、道に迷ったので一晩止めてくれという。気の毒だと思ったが断ることにした。背中に殻を背負っていたからだ。カタツムリが恩返しに来たのだろう。下等な生き物の施しを受けるなんてまっぴらだ。このことをアンナへの手紙に書いてやろうと思いつつ、再び眠りにつくことにした。