マキサパヨックの秘密

ヨーロッパのスイスとオーストリアの間にリヒテンシュタイン公国という人口は約3万人ほどの小さな国がある。日本で言えば小豆島くらいの大きさだ。ちなみにこの広さはチチカカ湖の52分の1に相当する。この国にノイトリック社というオーディオコネクターに関しては欧州で85%アメリカで60%のシェアを誇るメーカーがある。特に業務用オーディオ機器に付いている入出力用のコネクタは殆どがノイトリック社の製品と言っても良いだろう。
このように、意外な国の会社がピンポイントと言っても良いくらい狭いジャンルの製品に関して大きなシェアを持つことがたまにある。今日紹介するマキサパヨック・デザイン社もそんな企業の一つだ。
マキサパヨック・デザイン社(以下マキサパヨック)はチチカカ湖の東方500km程の場所に位置する小都市パンコントマテにあるデザイン会社だ。この国の企業には珍しくアメリカナイズされた雰囲気を持ち、社員はデザイン会社らしい先進的な外観の建物で働いている。同社は世界の有名人のサインのデザインを手がけている。南米の一流サッカー選手のサインは全て同社がデザインを行っているほか、アメリカ4大プロスポーツの年俸上位100人のうち82%、過去20年のアカデミー賞受賞俳優の70%とサインデザインの独占契約を結んでいる。日本ではまだマキサパヨックがデザインしたサインを書く有名人は少ないが、香港や韓国の映画スターにとって、同社のデザインしたサインを持つことはステータスの証となりつつある。
マキサパヨックは契約数を明らかにしていないが、2006年上期の時点で1000〜2000名の各界著名人とサインデザインの契約を結んでいると推測されているが、驚くべきことに同社では僅か4名のデザイナによってサインデザインが行われている。残りの社員の多くは顧客へのサイン指導やサインの品質管理サポートを行っている。また、移籍に伴うデザイン改変や偽造対策といったコンサルティング業務も同社の大切な事業となっている。このため500人ほどいる従業員のうち、本社のあるパンコントマテで働いているのは20名ほどしかいない。
<続きは「De IT Titi Presso」2007年2月号にて>