銀狐

銀狐
1994年/ウクライナ/監督:謝直怡/73分
20世紀前半の旧ソ連レニングラードの下町にすむ少年達の友情を描いた物語。
サッカーが大好きなどこにでもいる普通の11歳の少年ウラジミールはある日自分が重い緬臓病(緬臓は映画内の架空の臓器)であることに気付く。手術をしない限りウラジミールの余命は1年以内に尽きてしまう。しかし、彼の両親は手術代などとても出せる経済状態ではない。このままでは来年の大会に出場することができない。ウラジミールとその親友のカールは、6ヶ月間の猛勉強を重ね、数多くの失敗例を乗り越えて緬臓手術の知識と技術を身に付けた。
大会前日、ウラジミールはカールと協力して自らの緬臓手術を行う。手術の直前、窓の外を銀狐が駆けていった。銀狐は幸運を運ぶ動物と呼ばれている。
「ウラジミール!銀狐だよ!」
「そうだけど何か?」
停電、雨漏り、空腹、倦怠感…様々な障壁が二人に襲い掛かる。手術は困難を極めた。「このままでは手術練習の犠牲になった人たちに申し訳ない!」二人は自らを奮い立たせ、困難に立ち向かった。特にウラジミールのメス捌きは自らを手術しているとは思えないほどの正確さで、精密機械のように病巣を切り分けていった。開始から12時間、遂に手術は成功した。
「カール!このまま競技場に行こう!」
「もちろんさ!」
二人は車を飛ばして競技場に駆けつけた。試合は前半が終わったばかり、彼らのチームは3点のリードを許していた。「カール待ってたぞ!」「カールが着たからには逆転も夢じゃない!」「後半戦はカールにボールを集めよう!」チームの士気は最高潮に達した。
カールが加入した後半戦、先ほどまでの劣勢が嘘のようにチームは息を吹き返す。カールにボールを集める作戦が功を奏し点差はみるみると縮まって行く。キャプテンのレオンは絶妙なパスを出しカールの得点をアシストした。そしてついに試合終了直前で同点に追いつき、試合はPK戦に持ち込まれた。
ともに4人目が蹴り終えた時点で、得点は3対3のイーブン。敵チームの5人目のシュートをキーパーのラスコーリが見事なセービングで止める。優勝の行方は最後のキッカーとなったカールに託された…。