消防署

ご存じの通りボリビアの事実上の首都ラパス(憲法上の首都はスクレ)は富士山の頂上くらいのところにある。このため、空気の密度は海抜0m地点と比較して約2/3程しかない。低地も高地も空気中の酸素の比率に大きな違いはないので、空気の密度が低いと言うことは体積あたりの、酸素分子の数が少ないということになる。
このためラパスでは火がつきにくい、消えやすい、熱くない。最後のは嘘だ。
火がつきにくいことに加えて、家が煉瓦作りなので火事も少ないのだが、(牧草に放火するなど)まったく発生しない訳ではないので、消防署はある。ただし、世界の他の都市に比べて、消防にかかる予算は極めて少ない。
消防署員というのは、ラパスに住む人達にとって「あまり見かけた事のない人」「普段何をしてるか解らない人」という印象があるらしい。隣家のエンリケは、消防署員がヒーローとなるアメリカの映画を見ても実感がわかないと言ってた。そもそも消防署員の格好を見ても何をする人かしばらく解らなかったそうだ。
そんな消防署員の日常を紹介するために「こちらエルパライソ区ラパス駅前消防署」という漫画が制作された。タイトルからお解りの通り(恣意的にそう訳したのだが)「こちカメ」を意識しているのは明らかだ。作品中ではリオさんという愛称で呼ばれている、主人公のフリオという署員は滅茶苦茶な人物で、リオさんの周りでは、いろんな騒動が絶えない。この漫画では、リオさんの巻き起こすエピソードを通じて消防署の役割や普段の仕事を一般の人たちに知ってもらおうとしている。ただ、このリオさん、サッカーと酒が大好きでビール片手にサッカーを観戦中、滅多にない火事が起きても「どうせすぐ消えるよ」となかなか消火活動を始めないという、あまりに破天荒な人物設定となっている。
真面目な日本人の俺は消防署が抗議するんじゃないかと思うのだが、消防署サイドも含めてみんな大喜びだと言うから解らない。
余談だが、エルパライソ区ラパス駅前に消防署はない。これも「こちカメ」と同様。