シャンプーを飲まない99の知恵

日本でもそのうち翻訳されるんじゃないかと思うが、こちらでは「シャンプーを飲まない99の知恵」という本が大人気だ。
巻頭の言葉によると、この本は次のような意図で書かれているとの事。

平和な日常生活。それは何よりも大切な物です。トラブルや暴力に汚染された日々を送る恐怖を考えれば、平凡でも何のときめきが無くても「普通の暮らし」に勝る宝はありません。
そんな平和な日常もついうっかりとしたミスで台無しにされる事があります。それは、あなとを不幸のどん底にたたき込むとまでは言わないまでも、一日を最悪の気分で送る羽目に陥らせるかもしれません。例えば、こう考えてみて下さい。

シャンプーを飲んでしまったら?

  • シャンプーはちょっと口に入っただけでもとても苦い味がします。うっかり飲んでしまったらどのような味がするでしょう。想像しただけでも恐ろしくなります。しかも、その味はいくらゆすいでも、しつこく口の中に残るのです。これは小さな無間地獄と呼んでも過言ではありません。
  • 少量とは言え、安価とは言え、シャンプーはあなたやあなたの家族が働いたお金で買った物。それを本来の用途である洗髪以外に用いるなんて勿体ない!あなたが誤って飲んだシャンプーで何人もの髪が洗えた事でしょう。
  • あなたが苦さに強く、経済的に恵まれていたとしても、シャンプーを飲んでしまったあとは口から泡が出ます。週末のパーティに出かける前にうっかりシャンプーを飲んでしまったら、あなたはパーティで素敵なジョークの代わりに間抜けな泡を吹く羽目になるのです。
  • シャンプーは胃にも腸にも不用意な刺激を与える可能性があります。下手をしたら胃を洗う必要があるかもしれません。運悪く乱暴でモグリの医者に当たってしまったら洗車用のホースを口に差し込んでじゃぶじゃぶと洗われるかもしれません。

ざっと考えただけで、あなたを襲う不幸が4つも想像できました。現実はもっと厳しい事でしょう。平凡で何の輝きもない、平和なだけが取り柄だったあなたの日常は、たった1つのシャンプーに足下をすくわれるかもしれないのです。
本書では、あなたがうっかりとシャンプーを飲んでしまわないために何を気を付け、どう暮らしたら良いのかという点について、ラマにでも解るくらい簡単な文章と、平易なイラストで説明しています。本書を活用して、平凡で何の輝きもない平和なだけのあなたの毎日を一日でも長く維持してください。

このあとは、1ページに1件づつシャンプーを飲まない方法が絵入りで解説されているという体裁になっている。掲載されているのは、どれもこれも次のような他愛もない方法ばかりだ。
No.23「風呂場の鏡に『シャンプーを飲むやつは、ミミズより馬鹿だ』と書いておく」
No.46「二人ひと組で風呂に入り、互いにシャンプーを飲まないか注意し合う」
No.70「おいしそうな名前のシャンプーは買わない」
いずれも馬鹿馬鹿しい内容なのだが、とぼけたイラストが受けて、こちらではベストセラーになっている。
ベストセラーの二番煎じが出るのは日本やアメリカと同様で、早くも「車のワイパーを壊さない99の方法」とか「靴下が破れにくくなる99の叡智」といった本が出始めている。どれも似たような体裁で、イラストの雰囲気も似せているのだが、全く売れていない。これも全世界共通。